2011年8月4日木曜日

Prong - Cleansing

Cleansing

切れ味鋭いリフにフラストレーションをかき混ぜたようなサウンド。
独特のザクザク感が食欲をそそる。
計算された怒りはストレートではなく間接的に伝わってくる。
それらがうねるような緩急となり脳味噌が破壊されるような感覚に陥る。
楽曲にも表情があり絶叫、ボキャブラリー、ミステリアスと多面性である。
ニューヨークハードコアを作り上げた礎はモダンミュージックとして継承されている。

Aphex Twin - Come to Daddy

Come to Daddy

異端児騒音交響楽団のリミックス集。
原形を玩具のように弄り倒したアートは新作のようでフレッシュさがある。
ジャケの発想からして、やはり変人の世界はスルメ以上の何かがあるのだろう。
ランダムで押し寄せてくるリズムの嵐は心地良い。
しかし気分が高揚したら展開を捻ってくる。
聴き手はミュージックと思考で感じ得るような高次元サウンドに魅せられる。
難解なのだが自然と入ってくる感覚はアートの配下で緻密に計算されているからだろう。

2011年7月22日金曜日

Beastie Boys - Tour Shot

Tour Shot

『sure shot』のリミックス集とオマケ。
パズルとループを延々と聴かされると活性作用を引き起こす。
作業中や勉強中に投与してみるのもアリだろう。
その点はトランスと類似している。
アルバムでは味わえないバイタリティは集中力を増し相乗効果を得る。
それを狙ってクリエイトされているのであれば3馬鹿ヲタクは天才以外の何者でもない。
しかし、リミックスは彼らからしたら単なる玩具弄りに過ぎないのだろう。
ライブ盤は不要だった。

Skid Row - Subhuman Race

Subhuman Race

モダンなハードロックよりになった本作。
図太いリフが肉付けされ疾走しまくる。
70年代のハードロックが基盤になっている。
そのせいか懐かしくあり、故郷に帰ってきたような感覚だ。
長居は出来ないが、定期的な投与であれば爽やかである。
後半は急激に失速する。

Slayer - Divine Intervention

Divine Intervention

クラッシクから脱却しルーツ回帰とばかりにパンクよりなった。
邪悪さとか怒りなどから来るパワーではなく、70年代パンクにあった反骨心にも思える。
バブルガムパンクと貶していたグリーンデイやオフスプリングに憤りを感じ、本来のパンク精神の回答が本作に凝縮されている。
それは凄まじ過ぎる世界だった。
抑制されているアートだが緊張感ある爆走マシーンは脳内洗浄抜群だ。
4大スラッシュは消滅し、孤高の領域に達した。

Fear Factory - Obsolete

Obsolete


緊張感あるマシンガンビート。
脳味噌に鋼鉄で打ち砕かれるような感覚だ。
それが爽快に感じてしまうマジック。
進化論としては妥当だと思うが、個人的には前作を継承して欲しかった。
攻撃的で斬新なメロディは圧巻なのだが、のめり込み易く溶け易い悪い流れは痛過ぎる。
これがミュージックの魔物でもある。
フロントマンがメタルを払拭したいのだからしょうがないのだろう。
それを追うつもりはないのだが残念だ。
ただ定期的に摂取したくなるのも事実。

Machine Head - More Things Change

More Things Change

アルバムタイトル通り新鮮な空気を入れたような感じだ。
中盤はダルイがそれ以外は冷酷リフとメローが交錯し陶酔の境地へと誘ってくれる。
1stを継承しており、進化の方法としては最適だったと思う。
戦闘モードに入れるような緊張感が何とも云えない快感だ。
終生のフェーバリットまでは行かないまでも即効性で味わうには最適。
あとは定期的に注入するのがベストだろう。

Machine Head - More Things Change

More Things Change

アルバムタイトル通り新鮮な空気を入れたような感じだ。
中盤はダルイがそれ以外は冷酷リフとメローが交錯し陶酔の境地へと誘ってくれる。
1stを継承しており、進化の方法としては最適だったと思う。
戦闘モードに入れるような緊張感が何とも云えない快感だ。
終生のフェーバリットまでは行かないまでも即効性で味わうには最適。
あとは定期的に注入するのがベストだろう。

Machine Head - More Things Change

More Things Change

アルバムタイトル通り新鮮な空気を入れたような感じだ。
中盤はダルイがそれ以外は冷酷リフとメローが交錯し陶酔の境地へと誘ってくれる。
1stを継承しており、進化の方法としては最適だったと思う。
戦闘モードに入れるような緊張感が何とも云えない快感だ。
終生のフェーバリットまでは行かないまでも即効性で味わうには最適。
あとは定期的に注入するのがベストだろう。

2011年6月2日木曜日

The J Spencer Blues Explosion - Now I Got Worry Digi

Now I Got Worry

図太いグルーヴで社会を虚仮にしたような痛快サウンド。
茶化したアティテュードは力の源になる。
人間性が滲み出している解り易い作品だ。
ユーモラスたっぷりで栄養補給には最適だろう。
自己破壊が得意な方には最高の精神安定剤である。
これを聴いている最中は自分が無敵だという錯覚に陥るのでご注意ヲ。

2011年4月11日月曜日

Stone Temple Pilots - Shangri-La Dee Da

Shangri-La Dee Da

Stone Temple Pilotsのラスト・アルバム、「Shangri-La Dee Da」。
しかし散らばったアートには魔力は無かった。
90年代の力強さは何処へやら。
スコットの進化とは正反対にバンドはモチベーションを維持できず、名曲はあったものの、アルバムとしては到って普通だった。
しかし最後の残った力を垣間見ることは出来た。
中盤にだが、彼らの意地を感じた。
悪いなりにも微々たる光を確認することができたのは不幸中の幸いだ。

Yes - Fragile

Fragile

1971年発表のYesの4枚目のフル・アルバム「こわれもの(Fragile)」。
煌びやかな異空間を彷彿させる超人サウンド。
ジャズぽいドラム音が好感触だ。
テクニックがメロディとバランスよく噛み合うからこそ癒される。
そこがプログレ・メタルとは少々異なる。
フリージャズのグルーヴに浸る感覚。
そこに異彩なポップが放たれ更なる刺激が体全体に染み込んでいく。
最高の栄養素でありエネルギーとなる。

2011年4月8日金曜日

Black Sabbath - Black Sabbath Vol.4

Black Sabbath, Vol.4

初期ブラック・サバスの第一転換期であった4枚目のフル・アルバム「Black Sabbath Vol.4」である。
真冬の暗黒イズムを連想してまうような闇空間と濃密なグルーヴが躍動する。
際立ったヘヴィ感は無いが、病的のようなドゥーム・ロックとオジーのキャッチーな歌とメロディには切なくなってしまう。
ドラッグで犯されたパッションはモンスターへと変貌し聴き手を圧倒する。
これぞ魔王サウンドではないだろうか!?
裏社会を支配したポップなセンスは抜群だ。
サタニックというのは表面的なキャラクターであり、本質は社会に対する反骨心だったと思う。
前作までのグルーヴ主体から、本作はオジー・オズボンのメロディー・ラインにトニー・アイオミの暗黒リフが絶妙にマッチしている。

2011年4月7日木曜日

Kula Shaker - Mystical Machine Gun, Pt. 2

Mystical Machine Gun Pt.2

Kula Shakerの8枚目のシングル作。
①の「Mystical Machine Gun」でいきなり打っ飛び。
あとは①を生かす為のエキストラに過ぎなかった。

Gong - You

You (Radio Gnome Invisible, Pt. 3) (CCCD)

カンタベリーの雄、ゴングの6枚目のアルバム「You」。
ソフト・マシーンやキャラヴァンとは全く異質の不可解な高次元ファンタスティック・グルーヴが炸裂する。
このミステリアスとボキャブラリーが何故に「you」なのだろうか?
タイトル通りの難解さで、のらりくらりと攻めて来る。
テクノの影響というより、イタリアン・プログレのようなシンセサイザーなどを多用したエレクトロニカ・ミュージックとフリージャズが融合(フュージョン)し合う。
これがゴング・マジックなのだろう。
個人的には現代エレクトロニカの礎を作ったのは、ゴングやイタリアン・プログレ勢ではないだろうか。
実験性も然ることながら、人力とテクノロジーの衝突感が素晴らしい。
気色悪いシンセサイザーとフラットなサックスはお家芸となった。

Filter - The Amalgamut

Amalgamut

フィルターの3rdアルバム「The Amalgamut」である。
前作「Title of Record」ほどの勢いが感じられず、冗長気味で退屈なメローディーだけが虚しく飛び交う。
サビなどのキャッチーな組み立ては巧いが、モダンを重視した分、パンチが感じられなかった。
トータルで聴いても、軸となる旋律が類似しているため、展開が読みやすく退屈だった。
しかしFilter独特のサビメロは終始途切れることは無かった。
コンピュータとの融合も悪くは無かったが、方向性などの迷いが彼らの進化を妨げているように思えた。

2011年3月28日月曜日

Janis Joplin - ファースト・レコーディング

ファースト・レコーディング(紙ジャケット仕様)

ジャニス・ジョプリンのデビュー・アルバム「ファースト・レコーディング」。
ブルースより攻撃的なロックを演っている彼女には魅力を感じる。
佳作級の楽曲も彼女が歌えば名曲となる。
娼婦みたいなダーティなハスキー・ボイスと流れるような美声を使い分けている。
孤独だった彼女の寂しさはフラストレーションとなり、感情が歌に宿り、聴き手にもその心情が痛々しいほど伝わってくる。
その世界は悲しくヘヴィ過ぎるものだった。
貴重な作品である。

Maroon 5 - Songs About Jane

Songs About Jane

2002年発表されたマルーン5のセカンド・アルバム「ソングズ・アバウト・ジェーン」。
ジャミロクワイにR&Bとロックが混ざったような印象だった。
テンポの良いシングル系の曲が特に輝きを放っていた。
商業ポップの要素が満載であるのだが、様々なアーティストの良い部分をマルーン5色に脚色しているところが彼らの良い意味でのずる賢さなのだろう。
80年代のニューロマンティクスを彷彿させるナイスな楽曲が揃った宝庫作だった。
車で遠出するときのBGMとしては最高に気持ちが良いだろう。

2011年3月25日金曜日

Fatboy Slim - On the Floor at the Boutique

On the Floor at the Boutique

Fatboy Slimの5作目のフルアルバム「On the Floor at the Boutique」だ。
少々エレキちっくなところはロック愛好家にも好まれるのではと思う。
そこにトランスやエレクトロニックな要素が絡んでくると脳が活性作用を起こしているみたいだ。
これがコンピュータ・ミュージックの効能の一つではないだろうか!?
秀でたボキャブラリーは快楽から集中へと移行する。
音楽からパワーを得るとはこういうことなのだろう。
多彩に感じることのできるアート、70年代のクラウト系にも通ずる。
打ち込みであろうがミクスチャーであろうが受け口がある以上否定はできない。
到ってベーシックなミクスチャーではあったが素晴らしいアート展覧会だった。
さすが本場であるヨーロピアン恐るべし。

The Kinks - フェイス・トゥ・フェイス+7

フェイス・トゥ・フェイス+7

60年代キンクスを象徴する名盤「フェイス・トゥ・フェイス」。
裏アイドル盤円やかロック。
ビートルズ、ストーンズといった2トップのお陰で苦労が絶えなかったのではないだろうか。
もし大手のレーベルと契約していたら、キンクスというバンドはもっと巷に知り渡っていたかもしれない。
問い詰めたくもなるが、歴史に残るバンドに間違いないだろう。
本作もその奇跡を確認することができる。
ただ一つ悪口を言わせてもらうと、捨て曲が多すぎたことぐらいだろう。
個性差では他を圧倒していたし、ある意味60年代に関しては無敵だったと思う。

The Beatles - Beatles for Sale

Beatles for Sale (Dig)

ビートルズ・フォー・セール(Beatles For Sale)は1964年に発売されたビートルズの4作目のオリジナル・アルバムである。
苦手な初期の作品ではあるが、意外と聴き入ってしまう挙動は不思議だ。
懐メロという言葉では片づけることはできないのだろう。
個人的にカバーは『Kansas City』、『EveryBody's Tring~』以外は辛い。
シンプルな3コードを名曲に構築できる優れた感性。
影響や情熱、そこから得たものは理論だけでは済まされないのだろう。
その不思議な力の源は何モノだろうか。
初期と後期は全くの別物なので違ってくるが、彼らのエキセントリックな行動と伴っているから面白い。

Yes - Yes

Yes

あくまでも個人的主観なのだが、彼らが追い求めていたもの。
それはバーズなのだろう。
Yesのデビュー・アルバム「イエス」である。
スティーブ・ハウのソロでも堪能できる。
彼のカバーから考察してもポピュラー・ソングに重点を置いている。
後にプログレッシブの第一線で活躍するが本音は本作にあるのだろう。
80年代の流行を追った軌跡はこの原点回避だったのではないだろうか。
しかし、このハード・グルーヴの中に放たれるバラードとポップの数々。
やはり心に響き渡る名作だ。

Sonic Youth - Murray Street

Murray Street

オルタナティヴやグランジというシーンを支え続けたソニック・ユースの13枚目のアルバム「ムーレイ・ストリート」である。
ノイズオタク達が辿り付いた一つの回答がここにはある。
それは円熟味を帯びた失楽園だった。
音芸を武器に暴れまくっていた異端児の一つの集大成。
悲惨な音像を独自の視点で感じれる究極のノイズ・ロックだろう。
無気力な語り口調が脳裏に浸透し、子守唄のような癒しは最善の精神療法みたいだった。
トーンダウンと云うよりは雰囲気で感じたほうがいい。
メッセンジャーは確実に闇のスターダムへと上り詰めて行く。
病的エリアとポップが交錯する不整合ロック、いや、実験アートを堪能してもらいたい。

Led Zeppelin - Led Zeppelin III

Led Zeppelin III

「Since I've Been Loving You」が際立ったレッド・ツェッペリンの3枚目のアルバム「Led Zeppelin III」だ。
悪くは無い良作なのだが、初期の作品の中ではスルー率が高い。
微妙なサイケ色に後半はロバートの好きな微妙なブルース世界が淡々と続く。
イングヴェイばりに表現すれば「世界一過大評価されたジミーペイジの奇跡」ってとこだろうか。
「Since I've Been Loving You」が収録さていなかったら・・・と思うと同時に、他のエキストラ・ソングがこの曲を輝かせているように思えた。
自己満足に走ったとは言えども、アルバムの全米売上枚数650万枚(Wikipediaより)とは恐れ入る。

TNT - ファイアフライ

ファイアフライ

批難の嵐だったTNTの8枚目のフルアルバム「ファイアフライ」である。
個人的に生涯無縁だと思っていたバンドが某雑誌の酷評レビューのお蔭で辿りつく事ができた。
彼らが嫌うようなモダンテイストが満載である。
それまで応援し続けたファンは納得できないかもしれないが、それまでが納得できない私が納得してしまった。
この矛盾たるものが音楽の魅力の一つなのかもしれない。
万人に受けることは不可能である。
ラウド系に転進したとは云え内容は濃い作品だった
プレス群による余計な付着物のような表現には納得できなかった。
とにかく吹っ切れたような魅惑のサウンドに間違いはない。
確かに攻撃的になると凡百のラウド系と比較しても捨て曲は多いし大差は無いが、シンプルなバラード系は聴き入ってしまう。
素直にこの作品に出会えてよかったと思った。

Strapping Young Lad - City(歌舞伎町から超鋼鉄重低爆音)

City (re-issue + bonus)

ノイズ洪水警報だったデビュー作からインダストリアルの極限へと達したストラッピング・ヤング・ラッドの2ndアルバム「 City(歌舞伎町から超鋼鉄重低爆音)」である。
何やっても巧くいく生意気なクソガキことデヴィン・タウンゼントも現在はハゲオヤジ。
エンジニア兼Vo,Gとマルチな才能を存分に発揮している。
化け物ドラマーことジーン・ホグランのタコ足打法も健在だ。
デジロックという新たなジャンルも彼ら無しには語れないだろう。
ブラストビートとコンピューターといった、ありえない衝突感が爽快に脳味噌を突っ走る。
スタック・モジョをスターダムに伸し上げただけの才能はある。
何かに迷ったらこれを聴け!

Katharine Whalen - Katharine Whalen's Jazz Squad

Katherine Whalen

必ずバーに行ったら聴きたくなるようなオールド・ジャズ。
キャサリンが男を誘うようなクリーンな美声にうっとりとしてしまう。
ミステリアスな独特の雰囲気が切なく、そして愛しい。
鉱石ラジオのような古いアナログ空管から聴いている感覚だった。
ラフに始まり、物語が進行していくようにシリアスへと陥り、最後はハッピーエンドの如くフェード・アウトし、去っていく。
貴重な作品だ。

Gong - Angel's Egg (Radio Gnome Invisible, Pt. 2)

Angel

Gongの5作目のアルバム「エンジェルズ・エッグ」である。
民謡~カルト~ミステリアスなど、初期ピンクフロイドをエレクトロニカで覆っている印象だった。
柔らかで円やかなテイストは毒キノコにも変貌する。
フリージャズという仮面を被さり、アヴァギャとロックがコントの如く混合し合っているところがゴングらしい。
それらが事実、ユーモラスとなりエロスとなりシリアスからアンビエントへと変化していく。
ピンク・フロイドなどの王道路線とは全く異なったプログレッシヴ・ロックの表現を示唆している。
結局、彼らのトリックに最後まで気づけず、魔法が解けたときは泥沼へと落とされたような感覚だった。
面白いもので、理論とアートが併合しているのだがゴールが見えてこなかった。
1973年作のトリッキーな変態集団の世界は21世紀経った今でも未知なる世界として評価できる。
素晴らしい芸術的作品だ!

2011年3月19日土曜日

Pink Floyd - Saucerful of Secrets

Saucerful of Secrets

1968年発表のピンク・フロイドのセカンド・アルバム「 Saucerful of Secrets(神秘)」である。
シド・バレッドが脱退し、初期のようなダーティな実験的要素を残しつつも楽曲の構成が際立った作品だ。
個人的にはシド・バレッドが発していたサイケデリックなピンク・フロイドの進化形も聴いてみたかった。
しかしサイケを脱出したとは云え、透明感のある病的ポップは破片として残り光を遮る。
ダークな空間はアートのように聴き手を危険エリアへと誘っていく。
コンセプトと言うよりも、ロジャー・ウォータズが思ったことを純粋に発しているような感覚だった。
光と闇が交差する病的なロックは歪んだアートとしても面白みに溢れている。
感じたままを表現した魅惑のロックは後の布石となる名作に違いないだろう。

Anthrax - Spreading the Disease

Spreading the Disease

アンスラックスのセカンド・アルバム、狂気のスラッシュ感染(Spreading the Disease)である。
歌えるボーカルにスラッシュなスピードとリフが交錯する。
ジャケットのようにスラッシュ電流ワールドが炸裂する。
オフザけとスリリングとの入り混じりを聴いていると、様々な感情が蠢いているように思える。
スラッシュ四天王という開拓者が持つ独特のアグレッシヴ・メタルが痛快だった。
テクニック志向でありながらも聴き手を飽きさせないスリリング感が素晴らしい。
最後も社会を小馬鹿にしたようなフェードアウトで去っていく。
遊びのセンスもナイスな良作だ。

2011年3月15日火曜日

The Red Hot Chili Peppers - One Hot Minute

One Hot Minute

前作「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」で成功を収めたレッド・ホット・チリ・ペッパーズの6枚目のアルバム「ワン・ホット・ミニット」である。
ギターが麻薬依存に陥り、ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロに交代している。
その影響からか全体的にロック色が強かった。
個人的には初期のラップやファンクなどのフリーダムな攻撃性は好きだったが、本作も申し分無いほど素晴らしくまとまっている。
更に凄いのは彼らのエモーショナルとデイヴ・ナヴァロ色が巧く融合しあっている。
変態エロリスト集団の奇襲攻撃にノック・アウトされてしまった。
自然と躍動したくなるグルーヴや人情味溢れたパワー・バラードなど、思いのたけを全て出し尽くした印象だった。
ボキャブラリー豊富のタフガイ・ロック。
それは正しく彼らが成長した証しだと思う。

Dream Theater - Images & Words

Images & Words

ヴォーカリストを代え、ケヴィン・ムーア(Key)のナイーヴさと頭脳が巧く連動したドリーム・シアターのセカンド・アルバムである。
シングル行きは見事にポップ色にまとめ上げ、展開においてのブリッジを担う中間から後半が劇的でスリリングな世界を創り上げている。
正にケヴィンの失恋コンセプトと葛藤の中で個々のプレイヤーが躍動する。
戦い抜き、幸せを掴んだが、最後は脆くも崩れ去っていく。
しかし苦しんだ最果てに新たな旅立ちの序章が始まるようなプログレッシヴ独特のコンセプトが素晴らしかった。
YesやKing Crimson以来のプログレ系のバンドがアメリカのチャートで上位に入った、90年代を代表する名作である。

2011年3月14日月曜日

Blind Guardian - Imaginations From the Other Side

Imaginations From the Other Side

ブラインド・ガーディアンの1995年発表の5作目のアルバム「Imaginations From the Other Side」
いきなり戦闘態勢から猛突進してくるパワー・メタル。
血管がブチ切れそうになりそうな怒りと勢いの中で蠢く爽快感が意外とはまった傑作集だった。
オーケストラとの壮絶グルーヴの嵐。
刺激に餓えている方は、この毒牙交響楽団に犯されると良い。
切なさは静で、怒りは動と分かり易い展開が良かったと思う。
ラウド系とは違った攻撃的な構築美で、90年代の正当派ヘヴィ・メタルを進化させた名作だ。
気合を注入したい方には最適の1枚になるはず。

2011年3月10日木曜日

Beck - Mellow Gold

Mellow Gold

Beckのデビュー・アルバム「Mellow Gold」だ。
無気力なニートが世界を席巻したストレンジなサブ・ポップが心地良い。
アコースティックで脱力気味な語り調な歌メロはサイケのような覚醒作用に陥っていく。
ダーティ・ポップは陶酔と引き換えに制御思考を徐々に腐敗させていく。
しかし掴み所がないユーモラスと擬似世界は妙な感覚だ。
骨組みが存在しない幽霊ロックと比喩したくなる。
オルタナ気流に巧く乗っかって何時の間にか世界へとリンクするのだから、世の中なにが起こるか分からないものだ。
ユーモラスの中で闇と鬱が交錯しているような感じを覚えた。
怪奇的ではあるが、オリジナリティ溢れた作品だ。

Pantera - Far Beyond Driven(悩殺)

Far Beyond Driven

捻くれ、怒り、フラット、人並み外れた感受性の豊かさ。
その暴虐性はリミッターを切りまくりのハイテンション・クラッシャーとでも比喩したくなるほどだ。
モダンに研磨されラウド・ミュージックは新たな領域へと到達してしまった。
邪気溢れたフラストレーションは一体化し、力強い咆哮は聴き手にも飛び火してしまう。
ウィルスと化した制御装置はパッションとなり、そのエナジーは十分過ぎるほど伝わってくる。
ブラック・サバスの枝分かれの最大進化形の回答の一つが本作には秘められている。
デビューから3作全てが新鮮であり、彼らが苦しみぬいた集大成が見事に描かれていた。
素晴らしい名作だ。
これから反撃される方には是非ともオススメしたくなる逸品だ。

Van Halen - Van Halen(炎の導火線)

Van Halen

Van Halenの不朽の名作「Van Halen(炎の導火線)」である。
ハード・ロックの代名詞、定義と言っても過言ではないだろう。
レッド・ツェッペリンにも劣らない、アグレッシヴなテンションの若かりしエディ・ヴァンヘイレンとデイヴ・リー・ロスの強力なパッションに鳥肌が立つ。
初期衝動の如く、彼らの抱くアティチュードとロジックはアメリカン・ハード・ロックの礎となった。
50年代のブルースの破片を繋ぎ合わせたモダン志向は新たな音楽を創作してしまった。
テクニックと楽曲の質を極めた稀にしか見ることのできない蜃気楼みたいだ。
70年代ロックの魔力は凄まじいものだった。

CARCASS - NECROTICISM(屍体愛好癖)

屍体愛好癖

カーカスの名盤の一つである「屍体愛好癖」(放題)。
ビル・スティアの頭脳から放たれるロジックめいた暴虐メタルが堪能できる。
ボーカルはメッセンジャーの如く咆哮するので、楽器群は自由にユニゾン・ビートとリフをパズルの如く組み立てている。
それを手品のように操る鬼才クリエイターであるビル・スティアーには脱帽だ。
リヴァプール繋がりのビートルズは何一つリンクしない残虐ぶり。
メロ・デスを創り上げる一歩手前とは言えども、その面影は何となくだが感じられる。
初期のコア層からは批難論を浴びるが、個人的には名作「ハート・ワーク」より本作の暴れぶりのほうが好みではある。
程よい毒味こそミュージックの新たな産物なのだ。

キャラヴァン・ファースト・アルバム~コンプリート・エディション(紙ジャケット仕様)

キャラヴァン・ファースト・アルバム~コンプリート・エディション(紙ジャケット仕様)

カンタベリー系重鎮バンドであるキャラヴァンのバージン作。
Yesのスティーブ・ハウのソロから考察しても、当時のプログレ・シーンとの関連性が何となくだが見え隠れする。
サイケなソフト・マシーンを根こそぎ取っ払った印象だ。
毎日が聴き入れ態勢とはいかないでも、病的悩殺メローはダークネス精神とリンクしている。
これがミュージックの魔力である。
昭和40年代の青春ソングを彷彿させるメランコリー・ポップが満載である。
しかし突き詰めたらビリー・バンバンの世界観をも匂わせる。
『Policeman』、『Cecil Rons』は最高の瞬間を味わうことができる。
スマパン中毒者にも訴える要素もあると思う。
あらゆる受け皿との可能性を大きくしたカリスマ性は流石だ。
危険なニオイも兼ね備えているので過度な吸引には御注意を。

2011年3月9日水曜日

Machine Head - Burn My Eyes

Burn My Eyes

破壊工作オタクことロブ・フリン率いるマシーン・ヘッドの衝撃のデビュー作。
80年代ポップを崇拝するロブ・フリンの自己中ワールドは皮肉にも世界とリンクしてしまった。
「パンテラの物真似」というプレス・メディアの批評のおかげで本家と同等の地位へと登りつめた。
薬物依存のドラマーことクリス・コントスはロブの玩具に見えそうだが、やはり巧い。
ロブが土台となるリズムを最初に作り上げ、それを肉付けするクリス。
過去を消し去るパワーたっぷりの怒りにも似たハードコア・メタルが襲来する。
暗黙漂うベイエリア臭たっぷりの骨太サウンドも彼のフラストレーションから奏でられているみたいだ。
モダン・ハードコア推進派の軌跡を本作でも堪能できる。
最初は馴染み難いが、聴けば聴くほど様々なアプローチや世界観が見えてくる。
90年代ヘヴィ・メタルを変えた一角に間違いは無い素晴らしい良作だ。

Soft Machine - Turns On, Vol. 1

Soft Machine Turns on Vol.1

ソフト・マシーンのデビュー以前の未発表音源集。
コレクターの方には涎が出るほどのエネルギーとなるのだろう。
音質の劣悪さからしてブートレック(海賊盤)のほうが先行して出回っていた可能性が高い。
しかし流れる不協和音とサイケな演出も消化不良と云った感じが否めない。
別テイクだからアレンジが違ってくるのは分かる。
しかし需要と供給が存在するからといって、安易に発売して良いものなのだろうか!?
未発表音源に質を求めてはいけないのだが、個人的には「Third」あたりの別テイクが欲しかった。

Sonic Youth - Dirty

Dirty

ジャンキーなノイズ洪水警戒区域。
無気力なダウナー・ボイスと荒んだギター音はトリップ・ミュージックへと変貌する。
サイケでもトランスでもないSonic Youth独特の歪んだ境地。
タイトル通りの「Dirty」な世界、それは狂った精神世界だった。
荒れ果てたロックの先に一筋の光が見えるような、苦しみと楽園のような対比が面白い。
落ちるとこまで落ち、這い上がる。
そんなメッセージを訴えかけ、それらをパロディー化し皮肉る表現法がノイズとなり試食している感覚だった。
この強烈なダウナー・ロックが未だ衰えず進化しているのも驚きだ。

Taproot - Gift

Gift

Taprootのデビュー・アルバム「Gift」。
ミスチルの曲ではないので悪しからず。
世界征服を予感させる未完なモダン・ヘヴィネス系である。
リンキン・パークの粒子のようだが、何故か理由なく癖になる。
咽喉を壊しそうな歌い方をするボーカル君はポップ系の発声とラウド系のような咆哮を兼ね備えている。
それはさておき、小気味良いサウンドは脳の活性作用となる。
絶頂に達した時、不思議な感覚を得るだろう。
単純な荒削りさが格好良かった。
中々の良作だった。

Pink Floyd - Dark Side of the Moon

Dark Side of the Moon

1973年に発表されたピンク・フロイドの8枚目の作品「狂気(Dark Side of the Moon)」は、全米のアルバム・チャートに570週もランク・インし、ギネス記録にも認定された歴史に残るモンスター・アルバムである。
シド・バレッドの描いた初期のような芸術的なダーティ路線を継承しつつも、ロジャー・ウォーターズの構築美に終始圧倒されてしまう。
Yesとは少々異なり、人力とSEの合体と光り輝く楽曲の質が交錯し、聴き手の脳味噌を洗脳していく。
「静と動」という美的要素の中にラフなブルース・ソング「Money」で度肝を抜かれた。
遊び心の中にもメッセージが込められており、一風変わった叙情メローに鳥肌が立つ。
後のイーグルスなどの原形が本作には込められているような気がしてならない。
80年代のニュー・ロマンティクスの要素も意外と備わっている。
ロックに留まらず、70年代の最高傑作の一つだと思う。

2011年3月6日日曜日

KOЯN - KORN

KORN

KOЯNのデビュー・アルバム「KORN」。
ジョナサン・デイビスの内面が描かれたかのような歪んだ精神世界が強力だった。
スルメ作用、興奮、陶酔と現在の心境を後押ししてくれる魔法のような感覚に陥った。
思い描く感覚を得れないときは大きな堕落と化す。
更に独特のボキャブラリーで皮肉り罵倒されているのだが、それが意外と爽快だったりする。
中毒を通り越した重病ヘヴィ・ロック。
跳ねるような重いベースの歪みが気分を高揚させ、最後は神経が腐っていく。
残酷ポップスだったが、出会ったことの無い名作に違いない。

Thirteen Senses - The Invitation

The Invitation

Thirteen Sensesのデビュー・アルバム「The Invitation」である。
透き通った悲壮ポップは切なくなる。
恋愛しているときに聴くと、より大きな感動を得れるのかもしれない。
若さを取り戻したような感覚すら覚える。
これもミュージックの大切な要素だと思う。
佳作以上に語りかけてくる哀愁あるメロディー。
癒し音楽としても最適だろう。
シンプルな構成だが素晴らしい。
COLDPLAYをラフにした感じだろうか。
素晴らしい名作だ。

プライマル・スクリーム - バニシング・ポイント

バニシング・ポイント(紙ジャケット仕様)

プライマル・スクリームの5作目「バニシング・ポイント」である。
話題先行型商業不可解ポップのオンパレードだった。
デジタルを駆使したサイケデリック感は分かる。
音楽誌で評価されている本作は個人的には内弁慶だったと思う。
彼らからコンピュータを剥がしたら何が残るのだろうか。
妥協して受け入れ態勢で視聴しても理解し難い。
アンサンブルの妙とも行かず、中身から噛み締めていく人には退屈な産物でしかない。
音芸に秀でているわけでもなく中途半端過ぎた悪い例だろう。
ロックに莫大な金を投資している割には駄作な楽曲が多すぎる。
ブレーンは何故見抜けなかったのだろうか・・・不思議だ。

RADIOHEAD - Ok Computer

Ok Computer

世界制覇を成し遂げた永遠の名作、RADIOHEADの3rdアルバム「Ok Computer」である。
弾力のあるダークな粘りッ気。
蘇り、陥り、浸り、と様々な形容詞が出てくる。
シンプルでダークで難解な濃い世界。
スルメの領域まで到達できれば、終生のフェーバリットとなるだろう。
病的ロックだが鬱っ気はないので安心だ。
恐るべし知性派窓際族。
90年代を代表するロック・アルバムである。

2011年3月2日水曜日

Skin - Experience Electric

Experience Electric

UKの中堅バンドSkinの?作目のアルバム「Experience Electric」である。
ギターリストがモヒカンだからSkinなのだろうか。
それはさておき、サウンドは迷いなしのブリティッシュ・ロックに翻弄される。
個人的に爽やかハード・ロック系は苦手な部類だが、パワーを得る不思議な感覚は涎が出てくる。
のらりくらりと攻め、脳内が侵されそうな快感に酔いしれる。
自然体で聴けるからこそ、意気地な分析も不必要だ。
しかし若干捨て曲が多かったのが惜しいが、存在感では際立っていたと思う。
中々の良作である。

2011年3月1日火曜日

カン - タゴ・マゴ(紙ジャケット仕様)

タゴ・マゴ [初回限定盤] [Blu-spec盤] [紙ジャケット仕様]

トランスやサイケと通ずるポリリズムとパッション。
1971年に発表されたドイツ産クラウト兼、カンタベリーの雄であるカンの名作「タゴ・マゴ」である。
ボーカルの鈴木君は日本語で汚い単語を並べている。
美女と野獣と同様、このアナログ電子ミュージックにも汚い世界が存在する。
不協和音なトランス・ループの中で、アフリカン・ミュージックとの融合にスリリングなお経のような語り調と何でもアリの世界が芸術的だった。
泥酔のような感覚に襲われ、脳を刺激されトリップしてしまうようだ。
この非科学な変形フリージャズから放たれる爆音は彼らの動物としての本能を音としてダイレクトにぶつけているように想えた。
それは悟りの境地にも感じる3次元ミュージックなのかもしれない。
複雑なパズルを解いていくような難解レベルだったが、様々な思想や論理が働いている影響なのだろう。
マニアには溜まらない作品ではないだろうか!?

Thin Lizzy - The Peel Sessions

The Peel Sessions

1994年に発表されたThin Lizzyのベスト・アルバム(The Peel Sessions)である。
シンプルに創作し、それらが響き渡るからこそロックは存在する。
テクニック志向なバンドがメインストリームへと変化しようが、自身の描く世界をシンプルに表現した奇才家フィル・ライノット。
あのゲイリー・ムーアでさえもフィルのフローの中に収めさせるカリスマ性はさすがの一言につきる。
開拓者達には毎回不思議な魔法が生じる。
理由は解らないが、フィル・ライノットに関しても同様に70年代初期のThin Lizzyには不思議な力が働いていた。
勿論それは天性なものなのだが辛辣ながらもクリエイターと聴き手が共有できるような独特の空間があった。
それがThin Lizzyのオリジナルであり、唯一無二なのだろう。
70年代のロック黄金期に取り残されたイメージが強いが、あまりの斬新さにリスナーが追いつけなかったのかもしれない。
本物のロックを追求したい方にはオススメしたくなる逸品だ。